9月, 2013年

農業とIT:「畑らく日記」での記録例「記録」

2013-09-15

2013年9月15日 一般社団法人千葉IT経営センター 理事 堀 明人

無料で使える農業アプリ「畑らく日記」。兼業農家である私自身も自分自身の農作業履歴管理に使っています。テスト段階からの利用も含め、「畑らく日記」を使い始めてほぼ一年が経過したため、実績データをダウンロードして、Excelを使って簡単に集計してみました。
「畑らく日記」を使って、実際に何が見えるようになるのか、ご覧いただければと思います。

◆作業別工数割合
 作業別の作業時間を集計すると、一年間、どの作業にどれだけ時間を割いているかが見えてきます。小生の場合には、草刈りに35%の時間を費やし、次いで、2013年から営業開始したブルーベリー観光農園の受付に18%、観光農園の造園作業に18%を費やしているという割合が見えてきました。
 これにより、今後、草刈りや受付業務の中で定型化・マニュアル化できるような作業が定義できれば、パートやアルバイトを雇用することが計画でき、その分だけ、経営者としての私の時間を他に振り向けることができるようになるという選択肢が見えてきます。

◆圃場別作業別工数
 先ほどの作業別工数を圃場ごとに見ていけば、まだ観光摘み取り園を開園していない「B圃場」の今後の必要工数が推測できるようになりました。

◆曜日別作業別工数
曜日別の工数も、こうしてデジタルに見えるととてもわかりやすいですね。小生の場合には、木曜日は比較的他の仕事を入れているようで、金曜日と月曜日に作業が集中している傾向が見て取れます。

以上
(PDFファイル)

「ITファストコンサル」宣言

2013-09-12

2013年9月12日 一般社団法人千葉IT経営センター 代表理事 野村 真実

 中小企業様へのITコンサルを生業にしてから、あっという間に6年が経過いたしました。その短い経験の中で、芽生えてきた自分なりの考えをここで整理したいと思います。
 お付き合いしている企業様の中でも、社員を大切にする経営者は、安定した利益を上げ、生活を安定させることに最大限の努力をしていますが、ビジネスモデルが早いサイクルで変化し、利益の源泉(強み)が陳腐化していまい、安定することが困難になっています。今まで以上に利益を上げるためには、企業内の隅々で生産性を上げ、ムダ・ムリ・ムラを省く仕組みが必要です。そしてITもうまく活用し、営業力強化やコスト削減に結び付ける努力が重要です。
 では、安く、速く、十分なIT活用を進めるための課題は何でしょうか?

 私は、下記の3点が重要な課題だと考えています。

①「思い」を持ち、大局的な視点で「情報」に対峙する人が育っていない。
 外部環境の変化、社内状況変化による影響を受け、「情報」は常に変化し続けるが、一喜一憂せず冷静にデータを見ることにより、新たな気付きと知識が生まれます。例えば、技術的に優秀な製品やサービスが市場に受け入れられず、ちょっとした気遣い(ユーザビリティ)で市場から評価されることがあります。まず「思い」を持つことから始めなければ、課題は解決しません。

②ITは「情報」を扱う技術であるが、各種の「情報」を知識化するための方針が定まっていない。
 例えば、「顧客情報」は年賀状ソフトや受注管理ソフト、および多くのEXCELや紙の中、そしてメール本文等で情報が散乱しています。業務で活用する情報にはさまざまなデータが含まれています。これらのデータをもとに、状況と用途に応じた視点で加工、集計することで、新たな情報や知識を取り出すことができることを認識し、データの整理・整頓の方法や、見える化の仕組みを決める必要があります。

③「情報」の本当の価値は自社にしか分からないが、その価値が共有されていない。
 例えば、facebookの「いいね」のように、価値を伝えることも重要です。営業日報、作業日報、クレーム情報、トラブル情報など、日常業務で得られるさまざまな情報とそれに対するコメントをデジタル化し、グループ内や組織内で共有することで、顧客サービスの向上や製品の品質向上につながります。どの情報に価値があったのかが分かる仕掛けが重要です。

 上記の課題は、根本的なものであるにもかかわらず、あまり教育でも取り扱われていない分野であり、ほとんどの中小企業では、勘と経験をベースにした「情報」との対峙が行われていると考えます。「思いを持つ」人が、内外の環境に触発され、知識を生み出し、その思いを実現するために「情報」は存在します。そのためIT利活用を支援するための新しいコンセプト「ITファストコンサル」を企画し、実践して、多くの中小企業が自分たちの手でIT利活用を進めるための整備を行いたいと考えました。

 お客様に認めてもらえる「ITファストコンサル」分野を確立したいと思います。簡単なことではなく、最新のハイレベルなIT技術を活用しないことに各種異論もあるかと出るでしょう。ただ今までの繰り返しではなく、明確な意思を持って、「安く、早く、十分な」ITコンサルを提供していきたいと思いますので、ご協力のほど、お願いいたします。
 現在、ファストフード、ファストファッションはその分野を確立し、世の中に必要なものとなりました。ニーズに素早く対応し、低コストで十分な価値を提供しています。ITコンサル分野でも挑戦し、10年先、早ければ5年先にその認知度が高まり、競争が激しく、多くの中小企業が恩恵を得るような社会になればと思います。
 ではなぜ、今なのか?それは、クラウドとモバイルの次元の違う2つの革命によるものです。当然、すでに気付き、IT利活用にて競争力を上げている中小企業も多数ありますが、中小企業100万社のうちの数%に過ぎません。「情報リテラシー」格差も未だ大きな問題となっています。
 中小企業におけるIT利活用の実践や実践を支援する活動において、今まで蓄積した経験から、よりよいITコンサルを実現するためには、何が必要かを考え、以下の結論に至りました。
 ではここに、「売上を最大化し、コストを最小化するためのIT利活用」を中小企業目線で進める「ITファストコンサル」開始を宣言いたします。

 <宣言文>
  「ITファストコンサル」は、以下の「6つの価値判断」を持ち、努力を怠ることなく、丁寧に、
  中小企業のIT利活用を支援いたします。

   ①「ITスキル向上」よりも、「思いのある人」作りを
   ②とにかく低コストよりも、「得られる価値>投資」を
   ③1年かけて90点よりも、「2か月で60点」を
   ④緻密な診断よりも、「課題解決」を
   ⑤守りのIT活用よりも、「攻めのIT活用」を
   ⑥アルゴリズムの巧拙よりも、「コミュニケーションと業務プロセスの巧拙」を

以上、野村拝

(PDFファイル)

農業とIT:農業における「記録」

2013-09-05

2013年9月2日 一般社団法人千葉IT経営センター 理事 堀 明人

私自身が兼業農家であることも一つのきっかけに、「農業とIT」の分野に取り組み始めて4年が経過しました。この間、農作業履歴の記録用のスマートフォンアプリのプロデュースや、JGAP指導員資格の取得、千葉県地域IT化推進協議会での研究活動などを通じて、農業経営に役立つITのあり方を追い続けてまいりました。ここでは、これまでの取り組みで学んだことをもとに、農業における「記録」について整理してみたいと思います。

◆農業で大切なこと
農家の先輩から、農業において大切なことは「観察」だと学びました。実際、私自身の日々の農作業も「観察」の連続です。発芽の状態、果実肥大の様子、葉の色など、様々な情報を「観察」を通じて入手し、知識・経験と照らし合わせて判断を行います。
いつ頃に種を播けばよいか、いつ頃に収穫できるかなどを示した標準的な作型がある場合もありますが、土壌の栄養状態、土壌の水分保持力、風の流れや強さ、もちろん、気温、湿度、降水量などは、圃場によって千差万別です。標準作型を参考にしつつも、農業者は常に、今どうなっているかを「観察」して把握することが欠かせません。農業は自然環境との対話なのです。

◆農業における「記録」の意味
当たり前のことですが、春夏秋冬の四季というのは、一年に一度しか訪れません。農業者にとっても、季節の移ろいとその時々の「観察」は、一年に一度しか経験することができません。10年間農業をしても、四季はたったの10回しか経験できないわけです。農業においては、経験を積むといっても、なかなか時間がかかる部分が多くあるのです。
であるからこそ、農業では、経験を蓄積して未来に活かすために、それを「記録」しておくことが重要になります。人間の脳は忘れるようにできているそうです。「観察」した結果もどんどん忘れてしまう。「記録」は「観察」の結果をその時点の事実として固定化し、自分自身の「財産」とすることができます。「記録」は未来の自分への投資というわけです。

◆「記録」はデジタルデータで
「記録」は、農業者の日々の判断に際して、重要な意思決定材料の一つとなります。過去の事実を振り返ることができ、現在置かれている状況と対比することで、未来を予測しやすくなる。そのためには、必要な情報をすぐに確認できるなど、「記録」は使いやすくなければなりません。
「記録」の仕方には、手帳やノートへの手書きという方法もあります。手書きの良さは、なんでも自由に書き留めることができる点で、それ故に、「記憶」しやすくなるという利点がありますが、必要な情報をすぐに確認するなどの使い勝手は良いとは言えません。やはり、「記録」はデジタルデータとして残すことをおススメします。
「表1.」には、デジタルデータの利点と農業での活かし方をまとめましたのでご覧ください。

表1.デジタルデータの利点と農業での活かし方
デジタルデータの利点 デジタルデータの農業での活かし方(例)
1.検索が容易 過去の出来事(播種日や開花日)を振り返って確認できる
2.多くの情報を処理できる 収穫量や作業量など、過去からの累計や平均をすぐに把握できる
3.省スペースである スマートフォンなどで圃場や外出先にも持ち歩ける
4.加工編集しやすい 計画表や栽培履歴帳票にデータを二次利用できる
5.共有がしやすい 作業結果や観察内容を農業仲間と共有することができる

◆ちょっとした「記録」のコツ
日出から日没まで、時間に追われることが多い農業での「記録」のコツをまとめてみました。
(1)「記録」するものを選ぶ
やみくもに、なんでも「記録」するのはやめましょう。後になって「記録」したデータを活かすことを考えれば、「記録」は継続することが最も大事です。毎日記録していたのに、理由があってデータがなかったりすると、後になって集計がしにくく、結果として活用できないデータとなってしまうこともあります。毎日が忙しい農業者ですから、持続可能な範囲で、自分がコレと決めた情報を継続して「記録」するようにしてください。
例) 収穫量、作業時間、作業日付、農薬や肥料の使用量
(2)できるだけ圃場で「記録」する
「記録」は、農作業の都度、圃場で「記録」することが大原則です。自宅に帰ってからはどうしても忘れてしまいますので、作業と作業の合間、休憩時間、帰宅する前に軽トラの中で、など、圃場で都合の良いタイミングを決めて「記録」しましょう。圃場であれば、数量などの定量的な「記録」とあわせて、「観察」結果も写真や文章で「記録」することもできますね。

以上、農業における「記録」のあり方をまとめてみました。
スマートフォンが登場し、圃場で農作業記録をとるのがぐんと簡単になりました。「畑らく日記(http://www.hata-nikki.jp/)」という良いツールもありますので、まだ、「記録」を始めていない方は、未来のご自身のために、今日からスタートしてはいかがですか?

以上
(PDFファイル)

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